円環少女

「おまえ、変態だから魔法使いだろ」

 

長谷敏司「円環少女」を読んだ。一巻を読んでから最終巻を読み終わるまで実に9年もかかってしまった。地球に訪れる多種多様な魔法使いと、観測した魔法を消去してしまうために「悪鬼」と呼ばれる地球人の物語。

山のように出てくる魔法がいずれも魅力的で実に夢にあふれているし、それをいくつもの神話にうまく接続している。「魔法消去」という要素がまた上手い。これが現実と小説との間を橋渡しし、作品全体にリアリティを与えている。キャラクター達の造形も実に凝っていて、強いキャラクターがもっと強い敵を知恵を絞って命からがら倒すという僕の好きな展開がふんだんに盛り込まれている。救いのない世界で何度も死にかけ死なせかけながら、それでも悲劇にさせないあたりに作者の優しさを感じた。

だが、それだけにあの最終巻は、あの結末は受け入れ難い。何故最後の最後であのような片手落ちな救いをもたらしてしまったのか。あそこまで強引でご都合な救済を主人公達に与えるなら、何故倉本きずなを救わないのだ。作品中最も哀れな少女を傷心のまま、なにひとつ与えず孤独に死なせる。あまりにもひどい話だ。人を操る魔法使いがその上に存在する作家の手であらゆる幸せを奪われるなんて、実に悪趣味だ。

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