「あいつに弾丸をぶち込んでこいよトミー。……銃を投げたほうが効くかもな」「オレには撃てないと言うのか?」「“撃てない”と言おうが言うまいが撃てないだろ」
ジェイソン・ステイサム主演「スナッチ」を見た。友達に「バッカーノが好きなら絶対楽しめるから見ろ」と薦められ、ドンピシャリ。めちゃくちゃ楽しい映画だった。
86カラット(だか84カラットだか。何故か途中で縮んだ)のダイアモンドを巡る……ヤクザもんというか、悪人というか、うぅむ、言葉にすると実に陳腐になってしまうが、とにかく真っ当ではない連中の群像劇である。アホくさく、小気味よく、そして適度に刺激的な会話は実に僕の好みにマッチしていた。
演出が素晴らしい。カメラをくるくる回転させながら強盗達の顔をかわるがわる見せていくあのシーンだけでもう引き込まれた。物が登場人物たちの間を流れていくOPは見ていて楽しいだけでなく、見事にこの映画自体を現していたし、またあの短い時間でしっかりと人物たちの特徴を描いている。そんな中でも僕が好きな演出は、兎狩りと逃がし屋タイロンの追跡を合致させたシーンだ。二匹の犬に追われる獲物。無理なく、同じ構図を両立している。そして何より、片方の展開がもう片方の展開を予想させる。本当に素晴らしい演出だった。
シナリオとしては若干えげつない所もあるが、そういうシーンをちょくちょく挟みながらも全体としてはコメディーに仕上げている。登場人物の多さに見始めは面食らい、多少の混乱を生むかもしれない――ちなみに僕はフランキー(ベニチオ・デル・トロ)の変装した顔がブラッド・ピッドにしか見えず、そのせいで多少以上の混乱が生まれた――が、皆個性的なので、直ぐに見分けられるようになるはずだ。