僕のエメラルド・シティ

逆流主婦ワイフ

「大事なものはちゃんと」「戻ってくるから大丈夫」

 

イシデ電「逆流主婦ワイフ」(全二巻)を読んだ。素晴らしい。話の性質上、そして漫画本としての性質上、中身や登場人物について語る事は避けるが、ただ明るいだけでなく、ただ悪いだけでなく、ただ高慢なだけでなく、ただ馬鹿なだけでなく。二面性(というか、多面性)というものは決して特別なものなどではなく、何処にでもそして誰にでも存在するのだという、ともすれば蔑ろにされがちな、また時に「闇」などという漠然としたレッテルの中に押し込まれてしまうような、ある種アタリマエでありフヘンであろう事を描いている。表現として語弊がある事を承知で書くが、僕にとってはこのような漫画こそ、王道的な短編漫画であると言えるだろう。

この漫画が打ち切られてしまったというのはとても残念だ。後書きにも構想として触れられていたが、せめてもう一冊、この空気に触れていたかった。だけど、気に病むことはない。僕は作品を作者で読む。良い作品を見つけたのだから、次はこの周辺を掘っていけば良い。幸か不幸か、単行本としてはあまり冊数もないらしい。まあ、noteなるサイトで見た「私という猫 第三部」から噴き出すように漂っている、不穏な空気、不安な感じがなんとも(テーマが野良猫である分特に)腰が引けてしまうので、凍った湖の上を歩くように少しずつ少しずつ、足の踏み場を確かめながら、この作家の作品に触れていこうと思う。

 

 

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