僕のエメラルド・シティ

IN MY OPINION.

TRPGについてのimo。

 

「艦隊これくしょん」なるゲームがある。可愛い女の子がわちゃわちゃやってるゲームだ。詳しくは知らない。僕は動画と友人がプレイしているのを横から見た程度で遊んだことはない。見た感想は「つまらなそう」だったので遊ぶ気もない。やってる連中の話を聞くとゲーム性より可愛い女の子がわちゃわちゃやってるのを見るのを楽しむモノらしい。まあそれは良い。楽しんでる奴の首ねっこ捕まえてやめさせようなんて事はしない。

この度、それがTRPGになるという。この事態に対して「どんな形であれTRPGというものが世間に認知されれば、結果的にTRPG業界そのものが潤う。だから良いことだ」という意見を耳にしたが、僕はそうは思わない。このゲームに人を参加させるならば、周囲は多大なる覚悟を持ってそれを行うべきであるし、右も左もわからない初心者の群れにルールブックをホイと渡してハイサヨウナラ、なんて事は決してやってはならない。

 

なぜって、 「TRPGは難しい」からだ。

ハッキリ言ってこれに尽きる。「TRPGはかく在るべし」といった論説を打つ気はないが、これだけは譲れない。「TRPGは難しい」のだ。

まず前提として、参加者全員が一箇所に、ある程度の長さを持って集まらなければならない。キャンペーンをするともなればその期間は年単位にもなる。当然すべての参加者はその時間を都合しなければならない。今はオンラインセッションの普及によってある程度たやすくなったが、人が一定のスパンで集まる必要があるという状況に違いはない。「難しい」。

また、ただ人が集まれば良いというわけでもない。TRPGには絶対にGMが必要だ。GMは難しい。シナリオを考え、データを作り、NPCを創造しなければならない。「難しい」。

そして、他の参加者はPLという役割を果たさなければならない。キャラクタを作成し、その人物像をイメージする。「難しい」。

これらは、TRPGの種類を問わず、TRPGを遊ぶすべてのユーザーに突きつけられる課題である。いわば前提だ。実際には千差万別のシステムそれぞれにユーザー個人個人で「あう」「あわない」が存在している。そして、それを果たした上でユーザーは「楽しまなければならない」のだ。これがある意味で最も難しいのではないだろうか。

GMは神ではないし、王でもない。PLはGMの駒ではない。GMはPLがシナリオにどう立ち向かうかを楽しみ、PLを楽しませなければならない。

PLはお客さまではない。GMはPLの保護者ではないし、敵でもない。PLはGMの用意したシナリオを他PLと共に楽しみ、そしてGMを楽しませなければならない。

僕の経験を思い出してみると、参加者の誰か一人(もちろんこれはPL、GMに関わらない)でも露骨につまらなそうな態度を取っていると、TRPGはあっというまにつまらないゲームになってしまう。だからといって面白くもないのに楽しんでいるように装うのは苦痛だし、もっとつまらない。

そして、つまらないTRPGというのは地獄である。

 

TRPGは、ユーザーが物語を組み立てていく遊びだ。この遊びにルールはあっても筋書きはない。CRPGのようにキャラクタ達がシナリオライターの考えた面白いトークを繰り広げたり、重厚な世界を満喫してくれるわけではないし、アクションゲームのように試行錯誤を繰り返せば答えが見つかるようなものでもない。その場にいる参加者ひとりひとりが「自分を含めた」全員の事を考えながら遊ぶ、非常に高度なコミュニケーションゲームだ。十年遊んだ人間が五人集まってもつまらないゲームは発生する。勿論、僕達は良い。つまらないゲームに出くわしても、その失敗を踏まえて「次」楽しめればよいのだから。

だが、彼らは違う。新しい領域に足を踏み入れた人間に「次」はない。一番最初の体験が全てだ。つまらないゲームに出くわせば、それが彼らにとってのTRPGとなる。そしてこのゲームは、「つまらない」状態が一時間からひどければ五時間六時間続くのである。一体誰がそれをまたやろうと言うのだ。

このような状況は、どこででも発生しうる。いや、むしろこうなる率の方が高いと僕は予想する。だって、今は「難しい」「つまらない」ゲームなんて流行らないから。「簡単」「楽しい」を手軽に満たしてくれるゲームがそこら中に転がっている。プレイヤーはお客さまとなり、王様となり、ゲームの接待を受けていれば良い。そんなゲームが世界中に溢れている状況だ。そして、そんなゲームをこそ望む層に、「難しい」ゲームは受けないのだ。勘違いしないでほしいのは、僕は別に非難しているわけじゃないという事だ。「つまらない」ものから身を遠ざけるのは当然だ。僕だって「艦隊これくしょん」は「つまらなそう」だからやってない。では何故「つまらない」が存在するTRPGを遊び続けるのか。それ以上に、僕は知っているからだ。TRPGの面白さを。

だが、僕はこんなに尖った遊びを、誰とも知らない不特定多数の「みんな」にお勧めすることは断じて出来ない。彼らが楽しめる保障はない。責任も取れない。

この遊びは残念ながら、誰がやっても楽しい遊びではない。 楽しめるのはそれに適した環境に恵まれた、一部の人間だけだ。

 

 

「艦隊これくしょんTRPG」が販売されるという状況をチャンスと捉えてアクションを起こそうとしている君。

「艦隊これくしょんTRPG」をきっかけに、TRPGってなんだろう? と興味を持ったそこの君よ。

 

やるなとは言わない。遊んで楽しいならそれに越した事はない。ただ、知っていてほしい。この遊びは「難しい」という事を。

そして、気をつけていてほしい。この難しい遊びを楽しめるように。

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