「っポイ!」

「っポイ!」が完結した。 といっても、最終巻が出たのが半年前。 連載終了はさらにその1カ月前になる。 というのも、連載終了を聞きつけた当時、手元に既刊がなかった。 いつか書棚を整理したときに、売りに出したのかもしれない。 ともかく、しばらく新刊も追っていなかったので、このたび全巻を一括で手に入れ、通して読んだ。 この作品を初めて読んだのは確か LaLa の紙面上だったと思う。 後半はメロディー誌上での連載だったようだが、当時は LaLa で連載されていた。 タカオカと平の話で、ツバメ中の文化祭で彼女を見せ合うという約束をしていたタカオカと花シマダだったが、花シマダがマコトさんを口説き落とせなかったので、平に女装させてタカオカの前で紹介して……という内容だった。 ちょうど性転換ものとかに興味を持ち出す時期だったからかもしれないが、シゲキ的でもっと読んでいたいと思った。 感情移入の対象は平ではない。タカオカの方だ。 思えば主人公の平は自分にとってあまり感情移入の対象ではなかった。 立ち位置はドラえもんに例えると、「秘密道具を出すのに時間がかかるドラえもん」と言ったところだろうか。 アバターはのび太くんたち。その話の場合はタカオカだった。 トシゴロの心に痛いほど想い伝わってくる。 ソレが心の中にイゾン性のある何かを植えつけた。 のちにBLが好物になったのもその影響かもしれない。 女子の中ではマコトに魅かれる。 後にして思えば、よく見かける造形と性格だが、そこは少女漫画に分がある。 他のボブロングたちの追随を許さぬほど繊細で深く作られている。 描写、扱いをみると1巻からお相手は割れているのだが、やはりどこかでいちご100%のような展開を期待してしまう。 とても清々しく終わった最終巻だったが、心残りがあるとすればこの点だけ。 各話の中での一番人気は再読しても変わらなかった。9巻、第25話だ。 平の父と母の馴れ初めの話で、初読のときは文字通りに枕を濡らした記憶がある。 いつもなら一気に読むには疲れるゴチャゴチャした紙面から目が離せなかった。 再読して当時分からなかったことが分かるようになった、というのもあるが、逆に忘れていた10代の主張というのもあった。 ホッタのこと、アッちゃんのこと、マサキのこと……。 記憶をたどれば自分のことでもある。理解できないはずがない。 忘れていただけだ。 年をとって答えられる部分もあれば、平の出した正解に遠ざかった気もする。 もっともはなからまねはできない。 ともかく彼らは20年間後戻りをしなかった。 私も少しずつでも進みたい。 そう思ったし、それもよいとも思えた。 っポイ! 30 Continue reading 「っポイ!」

破妖の剣6 鬱金の暁闇6

 外伝、聖石と来たときはまた止まる予感がしてたのだけれど、意外と早く出たよう。前回の本編から、1年経ってない。すばらしい。さらに帯にて「まんが化決定」の告知。今度は小島 榊が描くのだろうか。  破妖の漫画化は今回初めてでなく、厦門潤 作画のものが4冊出ている。コバルト本誌で連載していて、当時幼かった自分も読んでいた。まだ読解力が不足していて、物語の筋は追えてもラスと闇主の関係とかやりとりとか、そういうものがよく分かっていなかったのだが、この漫画で二人の関係の壮絶さを知った気がする。今でもこのシリーズを追っているのはこの漫画によるところが大きいかもしれない。 『紫紺の糸』を漫画化した『深紫絃韻』が特に盛り上がっていて、壮絶な意地の張り合いから闇主が折れる?までがイイ。  内容は本編7割、番外編3割。番外編はチェリクの幼い頃の話。帯で怒濤の展開とあおっている割にはあまり進んでいるような気がしない。ラエスリールが目覚めたって言うのが大きいんだろうけど、ほとんどそれだけ。ただ、魅了眼の存在、第六の妖主の目論見が少し分かってきた。次はアーゼンターラと藍絲の戦闘がメインのよう。時期については「あまり時間を空けず、第七巻をお届けする予定です」とのこと。 破妖の剣 6 鬱金の暁闇6 (コバルト文庫)前田 珠子 小島 榊 by G-Tools

破妖の剣 外伝 紅琥珀

予告どおり,外伝。『紅琥珀』,『縁魔の娘と黒い犬』,『鏡の森』の三編。 『紅琥珀』 逃避行中のラスと闇主の話。外伝ではもう水戸黄門のようになってきている展開だが,やっぱりこの二人はいい。前田先生もこれが書きたかったそうで,後書きによるとこのツーショットは『鬱金』では「まだすぐには出て来そうにない」らしい(え,次で最終巻じゃなかったんですか)。確かに,ラエスリールは3巻ぐらいまるまる眠ったままで,放置プレイにしては長すぎるか。放置プレイは『紫紺の糸』ぐらいがちょうど良いというか,あの放置プレイは最高だった。  『紅琥珀』は「こうこはく」と読むそう。ぱっと見「べにこはく」と読んでしまう。 『縁魔の娘と黒い犬』 通りすがりの闇主が人助け(魔性助け)する話。主に殴ったり蹴ったりしているシーンが良かった。 『鏡の森』 リーヴシェランが魔性の罠に掛かって邪羅と彩糸が助ける話。いつもの掛け合いと,邪羅いわく「鬼の目の涙程度には珍しいもの」,というか良いものを見させていただいた。腫れた顔に涙とか,リーヴシェランの性格でやらせてしまうところが巧い。トリックじみてたけど。 全体読んでて思ったのは,愛称のある世界は良いなとういこと。 次は『聖石』の番外編らしい,本編も区切りのついたところで再開したいとのこと。 朗報。 紅琥珀―破妖の剣外伝 (コバルト文庫)前田 珠子 (著), 小島 榊 (イラスト)

はっぴぃセブン・FINALシーズン〈vol.3〉大安吉日福娘

久々の本カテゴリ。 密かに読んでいた「はっぴぃセブン」シリーズも最終巻。1冊目発行から7年だそうで,「はっぴぃステーション」のコーナーでは当時中学生,今大学生な方が多数紹介される。自分が知ったのは4年前だが,そのときにはもう「新・はっぴぃセブン」は完結していたはず。学園と FINAL に過半を消費したことになるのか。収拾を付けようと思ったらそうなるんだろうなとは思うが,待ってる方としてはどんどん年取ってつらいです。 中身の方は,ネタバレだけど,くりやとくっついて終わり。情報量ゼロ。黒闇天様は友也のメイドに。黒メイド良し。最初の頃は福娘らにドキドキしていた菊之介だったが,黒闇天には最後まで食指が動かなかった。近頃は美少女ゲーム路線で敵キャラを含めてまんべんなくというのに慣れていたので,ここまでストイックにされると悶える。ロミオとジュリエットじゃないけど,敵同士っていうのは萌えますね。ここは,シューピアリア・クロスに期待。 はっぴぃセブン・FINALシーズン〈vol.3〉大安吉日福娘 (集英社スーパーダッシュ文庫)川崎 ヒロユキ (著), COM (イラスト)

後はマのつく石の壁!

一年ぶりの新刊。待たせすぎ。表紙のグウェンダルはイケメンすぎ。 あとがきで薄いですとおっしゃってますが、まるマならいつもこのぐらいです。 ダルコ編の完結巻なので楽しく読めました。 新事実も判明し、そろそろ箱の件も情報が出そろいそう。クライマックスか。 あとがきによると、次は『闇にマのつく灯がともる!』(仮)なのだそう。 夏には出て欲しいところ。 後はマのつく石の壁! (角川ビーンズ文庫)松本 テマリ

破妖の剣 鬱金の暁闇5

母上復活。 その体でラス復活。 緋陵姫復活。 なん……だと…。 6番目には死者を復活させる力があるみたい。 世界に傷が付いてこのままでは天が落ちてくる感じだが、鍵の役割は広げる方と直す方どっちなんだろう。 天を支える者ってことかな。 破妖の剣 鬱金の暁闇5 (コバルト文庫)前田 珠子 (著), 小島 榊 (イラスト)

恋文の技術

『夜は短し歩けよ乙女』の森見登美彦の新刊。 大学院生 守田一郎が一世一代の恋文をつづるまでの話。 実際に会ってみた印象とその人の文章から受ける印象と、全然違うというのが良くあるけど、そういう人間の深みみたいなのが出ていて感心した。 書簡体小説とか日記体小説は古典でも現代でも結構あったように思うけど、自分が読んだものの中では読みづらいものが多かった。 たぶん難しいのだと思う。 本書は主筆守田が文通武者修行と称して多人数と文通するという内容なので、同じ出来事が何度も出てくる。 冗長だが、それ故に読みやすいと思った。 著者、森見 登美彦も登場人物として出る。 実際はどうなのか分からないけど、こういうイメージ作りには勝てない。 恋文の技術 森見 登美彦     by G-Tools    

フランス恋愛小説入門 – フランス恋愛小説論

 フランス恋愛小説の源流は『トリスタンとイゾルデ』だとよく言われています。その後中世騎士物語が生まれ、ラファイエット婦人によって『クレーヴの奥方』が書かれ、その影響を受けてルソーの『新エローイーズ』が生まれます。『新エロイーズ』はかのナポレオンにも読まれ、そのナポレオンを敬愛するのがスタンダールの『赤と黒』の主人公ジュリアンです。  とここまでは私の勝手なこじつけですが、本書『フランス恋愛小説論』はそのようなフランス恋愛小説、特に古典と言われる作品の技巧や時代考証などを解説する筆者曰く文芸評論です。筆者は大学教授ですので固い書名がつけられていますがフランス恋愛小説入門書です。『クレーヴの奥方』を始め『危険な関係』、『カルメン』、『感情教育』、『シェリ』と一度は聞いたことのあるでしょう作品が取り上げられています。実際私が読んだことがあるのは『クレーヴの奥方』だけなのですが。  『クレーヴの奥方』については以下のような感じです。高貴な生まれで母から教養と清純な心とを学び若くしてクレーヴ殿と結婚した奥方が宮廷にのぼりヌムール公と恋に落ちます。彼女は母からの教え通り無機質たろうとしますが、夫には感じたことのない愛の感情に悩み、ついに夫のクレーヴ殿にそのことを打ち明けてしまいます。クレーヴ殿はそのショックで病死。未亡人となった奥方にヌムール公が求婚しますが奥方は断って修道院で生涯を過ごします。ここで注目すべきは奥方の夫への告白の場面です。私はあなた以外の人を愛しましたと夫に告げてしまうのです。彼女は夫に対して崇高な愛を貫こうとしましたがそれによって夫が死んでしまうと言う結末を迎えました。この内容は彼女は身の潔白を護りたいがために告白をし、夫を死に追いやったと批判を受けることになりますが、本書はその崇高な愛には言及せず主に奥方とヌムール公との駆け引きにおける技巧や繊細さを解説していきます。 フランス恋愛小説論 (岩波新書)工藤 庸子 by G-Tools