「布団ないでしょ、そこ」
フラストレーションがたまった回だった。アニメの枠が11話しかないせいだろうが、ぶっ飛ばして話を進め、一気に一巻分を終わらせてしまった。全体的に巻いて巻いて話を進めるせいで漫画の中にあった会話の間や合いの手が見る影もなく、ただ漫画にあったシーンと台詞を切り抜いて流すだけの残念ムービーになってしまっていたのだ。小泉先生の演技は鬼気迫るものがあったものの、「この星の一等賞になりたいの、俺は!」もアニメ化決定時に流れたPVほど鋭さがなかったし、ああ僕もPVと1話に踊らされて少々テンションをあげすぎたか、と肩を落としたものだった。
特に、バタフライジョー戦があっさり終わったのが悲しかった。僕は「教えてあげるよ、Mr.月本!! 君の甘さと、ハッ。バタフライジョーの悲劇を!!」というあのセリフがとても好きだったのだ。
だが、スマイルの覚醒シーンは素晴らしかった。ヒーローの訪れを待つスマイルに、しかし救い主は姿を見せない。追い詰められたスマイルに現れた変化とは……。このシーンは半ば白けながら見ていた僕の意識を一気に引き付けた。思えば、一話でももっとも印象深かったのはチャイナの独白だった。ピンポンにおける湯浅監督のオリジナル要素とは、相性が良いのかもしれない。
このシーンが存在したおかげで、僕はこの回も好きになれた。不完全なコピーを見せられるより、自己流に再構成したものの方がよほど良い。
どうか。完全な再現が無理なら、監督の解釈した新しいピンポンを作ってくれ。愛の有無、情熱の有無など他人には、そして本人にすらも判別出来るものではないが。やはり、出来上がってくるものには違いが存在すると信じているし、僕の中で優劣のつく作品というのはそこの有無を僕の何処か判然としない部分が嗅ぎ分けているのだと信じているから。
音と動きがつくだけなら脳内で良いのだ、僕は。アニメにするというのなら、それを上回る何かを望んでやまない。