【小説】角川文庫版 数えずの井戸【感想】
著:京極 夏彦
皿は必ず━━欠けている。
足りぬから。欠けているから。永遠に満たされぬから。だから数え続ける。数えても数えても数え切らぬ━━。
無間地獄。
角川文庫2014年8月の新刊。約4年2ヶ月1週間の積み。『冥談』からは8ヶ月振り。
江戸怪談シリーズ第3弾。本当はこの前に『覘き小平次』が第2弾としてあるんだけど、それを買うまで読まないとやっていると、この先出る本を永久に読めない気がしてきたのでようやっと手をつけました。シリーズとは言っても直接的に繋がりがあるわけじゃないだろうし。
元々は京都新聞の夕刊等の小説枠で連載されていたもので、当時毎日読んでたんだよなぁ。京都新聞は2008/02/19連載スタートか。
おいおい、10年以上前に読んだことになるのかよ。
今回は『番町皿屋敷』がベースで、皿と井戸に心を囚われてしまった人々の群像劇となっている。
主要登場人物は6人おり、その6人の視点がローテーションする形。当時、視点いくつ増えんねんと思ったものである。
1人1人は何処にでもいそうな人達なんだけれども、その人達の気質がここまで悪く噛み合うかと思うほどの負のベストマッチをしてしまうのがいけない。
菊みたいな人、実際にいるよなぁ。ここまで極端ではないにしても、揉めるよりは自分が悪者になってれば良いっていう人。周りがそれを見てどう思うか、ちょっとは考えてほしいんですよね……。
ドミノ倒しのように事態が悪い方向に倒れていく様、絶望へのドライブ感が相変わらず凄い。
本当の最後、次々と登場人物が死んでいくシーンが回想形式になっているのはどういう狙いなんだろうか。
何にしても何ともやりきれない話やでぇ。
でもあれか、現実に起こった事が怪談になってしまうとしたら、それは関係者全員が死ぬか口を噤むかした結果でしか有り得ないってことか。
按摩の宅悦って、どっかで見た名前だと思ったら『嗤う伊右衛門』にも出てた人か。又市等の『巷説百物語』以外のキャラも登場しているとは。いや、名前しか出てないけど。
蛇足っちゃー蛇足なんだけども、中央公論新社の特設HPの京極さんのインタビューが個人的には面白かった。
そうか、元々は2人しかいない登場人物の要素をバラして複数のキャラに振り当てているわけか。播磨と主膳、菊と吉羅、道理で鏡合わせっぽいわけですわ。
次は2015年11月に『眩談』、2016年1月に『旧談』、2018年2月に『鬼談』。
燃:C 萌:C 笑:C 総:A+
シリーズリンク
・角川文庫版 覘き小平次(2008/06)
著者リンク
・文庫版 冥談(2013/12)
・文庫版 眩談(2015/11)
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