【小説】文庫版 ヒトごろし(下)【感想/ネタバレ】
著:京極 夏彦
本当のヒトごろしには。
感情などない。
2020年9月の新刊。約1ヶ月2週間半の積み。上巻と同時発売。
そういや総扉が百鬼夜行シリーズと共通フォーマットになったのって本作からなんだな。『ヒトでなし』は確か違ったよな?
さて、合法的に人を殺せる枠組みとして歳三が作り上げた新選組。しかし時代の流れの中でやがて新選組は不要な存在として忌み嫌われるようになっていき……。
上巻でも既に割とくしゃくしゃだった新選組だが、下巻になってどんどん人員が入れ替わって、なお一層くしゃくしゃに。いや、くしゃくしゃにも程があるレベルでくしゃくしゃなんですが……。
そんな中、やたらめったらに仕事の出来る歳三である。人を合法的に殺すというクソイカレた欲望とはいえ、目的意識がしっかりしているからこその仕事振りなんだろうな。
あっちにふらふらこっちにふらふらする周囲の人達への説教もすんなり入ってくるぜ……。
歳三が言うと「ヒトごろし」だけど、他の人が言うと「人殺し」と表記されるのは歳三が明確に「ヒトごろし」とは何かを定義付けているということなんかな。
「ヒトでなし」の表記も使い分けてるしね……。
『ヒトでなし』の荻野了湛が登場し、ここでようやくはっきりと繋がったか。『ヒトでなし』の方の了湛と同一人物ってこと?それだと年代が合わなくないか?『ヒトでなし』ってほぼほぼ現代の話だったよな……?うーむ……?
勝海舟は『弔堂』に登場していた勝海舟と同一人物なんだろうな。話し方も同じだし、京極さん作品全体の繋がりを考えると同じと考えた方が楽しい。
涼さんの話や歳三が市村鉄之助に刀を渡して送り出した話が『今昔百鬼拾遺 鬼』では歴史として語られているのも面白い。
こう、何作にも渡って大きな歴史の流れが形成されているのが興味深いんですよねぇ。
最期は涼だけに看取られて死んでいく歳三のもの哀しさよ。鬼の副長と言われてきた歳三も散り際は存外あっけないものでなぁ。もうちょい余韻を残してくれても良かったんではなかろうか。
よーしよーし、これでようやく京極さんの文庫最新刊に追いついたぞ……。
燃:A- 萌:C 笑:A- 総:A+
シリーズリンク
・文庫版 ヒトごろし(上)(2020/09)
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