吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる ~Long Long Engage

吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる ~Long Long Engage
著:野村 美月 イラスト:竹岡 美穂

みんな、まぶしかった。
みんな、一途だった。
みんな━━恋をしていた。

2016年2月の新刊。約6ヶ月半週間の積み。シリーズの打ち切りから半年、物語に決着をつけるためのエピソードがソフトカバーという異例の形で登場。
イラストは章扉にだけあります。

刊行形態が変わったのはカテゴリーエラー気味になった内容に相応しい刊行先を編集部に相談したところ、この形に落ち着いたからだそうで。
ただ、この出し方で本来求めている読者層に気付いてもらえるんだろうか……。

語り手は本編の冒頭等でも名前だけが登場していた詩也の娘ミナ。彼女が父へ抱く複雑な想いと共に、本編の第2部で描かれる予定だったエピソードが語られていく。
本来は、本編完結後にボーナス巻として出してフィナーレを飾るつもりだったのかな。

多分、1章毎に文庫1冊使ってやつるもりだったのではなかろうか。ってか、詩也の周囲、吸血鬼の関係者多過ぎィ!

それぞれのエピソードがこれまでの野村さんのシリーズと比べても、かなりハードに感じる。ビターを通り越してるぜ……。
一応、第1部で仕込んであった伏線は一通り回収された模様。いち子女子がダウナーなのって雫に血を吸わせていたからだったのかよw

本編で言われていた待ち受けている哀しみの大きさがデカ過ぎて唖然とした。いずれ寿命で2人は引き離されるんだから、それまでは幸せな家庭を築かせてあげても良かっただろうに……。

これまでの積み重ねの雰囲気から察するに、打ち切りが決まって結末が変わったわけではなさそうなんだよな。最初から、この胸にずしんとクる展開が想定されていたのか……。あー、キツい。

これはかなりラノベのスタンダードからは外れた内容ではあるんだけど、かといってボーダー扱いにするほどとも言い難いんだよなぁ。特定のレーベルからの刊行でもないし……。

総評

そういうわけで永遠に恋し続けるファミ通文庫『吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる』文庫5巻+ソフトカバー1巻の変則構成全6巻、これにて打ち切り完結。足掛け1年9ヶ月か。

やはりラノベでガチの演劇というテーマは扱い難かったか……。野村さんのシリーズの傾向はキャラがある程度で揃ってからが本番という感じがするので、これからってところだったと思うんだけどな。

打ち切りで終わらずに打ち切り完結にしてもらっただけでも有り難いと思わなければいけないんだろうなー。

逆に、ダイジェスト気味に語ってもらって良かったのかもしれん。10巻くらいかけて詩也と綾音さんの恋を丁寧に描いた後で、あのラストをぶっこまれたらショック死してしまう可能性があるしな……。

野村さんは身体的にも精神的にも追い詰められてそうだけど、大丈夫なのかしら……。病気が大分ヤバそうに見えるが……。

燃:C 萌:A 笑:C 総:A

シリーズリンク
吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる⑤(2015/08)