【ボーダー】角川文庫版 彩雲国秘抄 骸骨を乞う 下【感想/ネタバレ】
著:雪乃 紗衣 イラスト:由羅 カイリ
「あなたの国ですよ、我が君。あなただから、私たちは駆け回った。戦が嫌いで、何十年たっても喪うことに平然と慣れたりできない、優しいあなたのために生きたかった」
2016年2月の新刊。約約6年10ヶ月1週間の積み。上下巻同時刊行。
表紙は霄太師……かな?
さて、後半戦。晏樹と劉輝のエピソードを収録。晏樹の悠舜と旺季のストーリーを裏側から補完するような構成にもなっていますね。
更に本編の裏で暗躍していた時の事も語られている。朔洵って晏樹の腹違いの弟だったのね。確かに今思えば髪質とか抱えてる闇が似てるのか。
もう何が本編でも明らかになっていて、何が語られていなかった要素かがさっぱり記憶に無いw
1年足らずで終わってしまった劉輝と秀麗さんの結婚生活。穏やかに、しかし確実に減っていく残り時間を感じさせる描写が幸せと苦しさの板挟みで何とも複雑な感情になるよね……。
この1年間のストーリー、もっとじっとりねっとりたっぷり読みたかったな。
悠舜と黎深達の出会いを描いた『運命が出会う夜』もオリジナル版と同じく収録。柚子茶が飲みたくなってくるから困る。
それにしても悠舜や黎深は素直な友情!という雰囲気じゃないけど、鳳珠や飛翔はアツい友情を見せてくれて良いよねぇ。
このストーリーって一般の兵士が戦後をどう生きてきたのかという話なんだけど、『彩雲国』で庶民のドラマにスポットが当たるって珍しくない?大体官吏や貴族の話だからな……。
100ページ近い書き下ろし『冬の華』は秀麗さんがいなくなった世界を劉輝がいかにして生きたか、それに加えて秀麗さんと劉輝の娘、重華(ちょうか)が何故彩雲国初の女王になったのかが垣間見えるストーリー。
てっきり旺季や彼に縁の深い人物の番外編的エピソードだとばかり思っていたが、ウルトラハイパーマキシマム重要なやつじゃねーか!!
生前秀麗さんが予想していた通り、重華は欲しいものがあれば迷わず突き進んでいくスタンスなのね。秀麗さんは周りに対してハキハキ言うタイプだったけど、重華は黙って目的を遂行する、そこは違うんだね。
当然、結婚した人も多いんだけど、誰と結ばれたのかは明言されてないの焦らすよね~。明らかに影月は香鈴と、楸瑛は珠翠とって感じだけど。絳攸は誰とだろう。世羅姫かなぁ。
こんなんそれぞれの結婚のエピソードだけで1本お話が出来るレベルやろがい……。
最初こそ皆が出世したり、親になっていたりする姿が見られて感慨深かったが、徐々に不穏な空気が漂い始めてさぁ。
劉輝が魂魄の状態で重華の旅に付き添っていたと判明したところから一気に重たくなってしまって。
劉輝は病気でもう長くはなく。楸瑛はこの番外編が始まる前に既に劉輝を守って死亡、静蘭も死因は不明だけど、既に亡くなっていて。は???辛過ぎるやろ……。
それからは視点がある程度絳攸に移っていって。次々と大切な人達が自分の前から去っていく辛さよ。自分が悠舜に勝てるところは劉輝より先に死なないところくらいって確かに言ってたけど、ホンマになるなんて思わんやんけ……(´;ω;`)
誰かを追い掛けてばかりだった劉輝がいつの間にか追い掛けられる側になったなんてな……。それだけの時間が過ぎたってことねぇ……。
重華が玉座に座るところまでは語られていないが、成程こういう経緯で王を志すことになったのかなというのは感じ取れるようになっている。
これは是非、本編を読んだ人全員に読んでほしいと思うが、一方でこんな結末なら見たくなかった!っていう人もそこそこいるだろうな~。だから敢えて本編から少しタイトルを変えて出したのかもしれない。
個人的には世代交代してセカンドシーズンをやってほしいくらい面白かったんだけども。登場人物達の心情がめっちゃ胸に刺さってくるんですよね。
ビーンズ文庫版は本編の角川文庫版が完結した後に読もうと思います。うわ、今チェックしてきたけどビーンズ文庫版には書き下ろし入ってないのか。3分冊してもいいから入れるべきだったんじゃないの……。
燃:A+ 萌:A 笑:A- 総:S
シリーズリンク
・角川文庫版 彩雲国秘抄 骸骨を乞う 上(2016/02)
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