【小説】リバー【感想／ネタバレ】

著：奥田英朗（ひでお）

「ぼくらは永遠に事件の関係者なんだよ」

集英社ハードカバー2022年９月刊行物。約２週間半の積み。社内情報誌的なアレで紹介されていたので気になりまして。
奥田さんの著作は10年以上前に『最悪』と『邪魔』を読んだことがある。その時に群像劇を書くのに長けている方という印象が残っていて、今回も群像劇というのでなぁ。

10年前、渡良瀬川河川敷で発見された若い女性の死体。未解決に終わった本事件は県警に暗い爪痕を残していた。今、新たに発見された死体に浮足立つ人々。警察、遺族、容疑者、様々な思いが入り乱れる中、事件の捜査は進んでいく……。

事件は色んな形で人々の人生を捻じ曲げるというのが伝わってきて辛い。被害者は勿論、その周囲の人々、操作に携わった警察関係者の人達だってそう。
現場では皆から慕われているベテラン刑事も、家に帰れば家庭を顧みず妻から疎ましく思われてるって状況しんどい……。

娘を殺された夫婦の間にも亀裂があるの辛いよなぁ。芳邦さんのこの恨み忘れてやるものかって気持ちめっちゃ理解る。なのに周りはどんどんその事を忘れていってしまって、ずっと怒ってる俺がおかしいのか!?ってなる感覚ほんと理解る……。

犯罪心理学者の篠田先生、肝が据わっていて良いキャラしてるな。主人公やそれに近い立ち位置でもストーリーが成立しそうなくらいキャラが立ってる。

結局、犯人の視点での描写は無く、そのはっきりした犯行動機は判らず仕舞い。各々が抱えているプライベートの問題もあれ、全然解決してなくね……？という何とももにょっとした終局を迎える形に。うーん、世知辛い。

犯人が誰かというのは折り返しに到達する前にプンプン匂ってきて流石に確定するには早過ぎるだろと思いきや、最後まで覆ることもなく。あれ、どんでん返しとか無いんだ……？
こんな早い段階で捜査が動くなら、まだこっから盛り上がるでしょと期待しちゃったのだが……。

てっきり各問題が複雑に絡み合って、どんどん悪い方向に転がっていくものとばかり……。あちこちに地雷が埋まっていることは明白なのに意外とどれも爆発しなかったのが意外。芳邦さん、目が悪い状態で無理矢理運転を続けるから絶対交通事故を起こすと思ってたわ……。
『最悪』と『邪魔』を知っているだけに余計にね……。

個人の問題だと思われていたものが、実は事件の核心に繋がっていた、みたいなことになればもっと面白かったのに。
うーん、群像劇としては非常に面白かったけどミステリと言われるとちょっと疑問符が付くかな……。

新刊紹介の掲載されている折り込みチラシ、文字ばっかだな……。せめて書影は載せようぜ……。売る気あるのか疑っちゃうよな。
売る気あるのかと言えば本作のタイトル、検索性めっちゃ低いよな。エゴサする必要なんてねーよ！ってことなんだろうか。

燃：Ｂ　萌：Ｃ　笑：Ｃ　総：A+