【小説】文庫版 狐花 葉不見冥府路行【感想/ネタバレ】
著:京極 夏彦
「縁があって何かが起きるのではない。起きたことが━━縁になるのです」
角川ホラー文庫2024年12月の新刊。約2週間半の積み。
タイトルは「きつねばな はもみずにあのよのみちゆき」と読みます。オシャレ……。
元は歌舞伎の脚本として書き下ろされたものをほぼ同時に小説としても刊行したものらしい。
あ、俺、もしかして角川ホラー文庫処女だったのかもしれん。京極さんがホラー文庫で本を出すのも初めてか。
いやしかしこの内容でホラー文庫から出すって言うんなら、これまでのタイトルもホラー文庫から出すべきなのでは……w
雪乃という娘が出会ったのは萩之介という美しい青年。彼はこの世にいる筈の無い男。それを聞き及んだ雪乃の父達はかつて犯した罪が明るみに出ることを恐れて……。
萩之介という男は一体何者なのかという謎でぐいぐい読ませてくるよねぇ。京極さん作品としては相当薄いのでストーリー進行のテンポ感も良い。
中盤までは悪人がどんどん滅んでいくので悪いことは出来ぬものよのぉとほくそ笑めるのだが、後半の絶望へのドライブ感が凄いのよ。雪乃と萩之介の死に様が辛くて辛くて……。何でこいつ等が死ななきゃいけないんだよぉ……となる。やるせない……。
京極堂の曽祖父、中禪寺洲齋(じゅうさい)が登場。以前から京極さんの作品には登場しているキャラだったのか。僕が触れたことがないタイトルにしか出ていないっぽいな。
洲齋の語り口引き込まれるねぇ。悪人も思わず聞き入っちゃうもよな。
そんな洲齋、憑き物落としをしに出て来ただけかと思いきや、しっかりストーリーの軸に関わる立ち位置だったのに驚いた。というか彼が主人公という扱いだったのね。
読む前までは取り敢えず京極さんの本だから読むか~くらいの感覚だったが、意外や意外、早く先が読みたい読みたいとなって面白かったですね。百鬼夜行シリーズと江戸怪談シリーズのミキシングみたいな塩梅でさ。
燃:A- 萌:C 笑:C 総:A+
著者リンク
・文庫版 嗤う伊右衛門(角川文庫、2001/11)
・文庫版 巷説百物語(角川文庫、2003/06)
・文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし(角川文庫、2010/10)
・厭な小説 文庫版(祥伝社文庫、2012/09)
・角川文庫版 幽談(角川文庫、2013/12)
・文庫版 鬼談(角川文庫、2018/02)
・分冊文庫版 ルー=ガルー 忌避すべき狼(上)(講談社文庫、2011/09)
・文庫版 虚言少年(集英社文庫、2014/09)
・中公文庫版 オジいサン(中公文庫、2015/02)
・文庫版 虚実妖怪百物語 序/破/急(角川文庫、2018/12)
・文庫版 ヒトでなし 金剛界の章(新潮文庫、2019/02)
・今昔百鬼拾遺 天狗(新潮文庫、2019/07)
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