【ラノベ感想】図書迷宮
著:十字 静(とおあざ・せい) イラスト:しらび
「こ……これはそう!感情の昂ぶりにより発生した生体エネルギーの奔流です!皆に迷惑をかけたことへの反省、授業への極度の集中により、覇気(オーラ)となってしまいました!!」
アルテリアの肋骨ぺろぺろ。
MF文庫J2017年10月の新刊。約1週間の積み。第10回MF文庫Jライトノベル新人賞第三次選考作品。応募タイトルは「図書迷宮の吸血奇譚」。
イラストのしらびさんは『一年十組の奮闘』『聖黒の龍と火薬の儀式』でMF登場済ですね。
最初はスルーしていたんだが、あのMF文庫Jが価格を上げてまで規定以上のページ数の本を出したということで気になって買ってきました。
そうなんですよ、MFは値段を一律にするためにページ数上限が設定されてるんですよ。普通は最大330ページくらいだっけな。
それを曲げてまで、規定を無視して応募してきた作品を刊行するというのは余程のことである。
普段は一択にしている値段を変更しただけでも恐らく普段はやらない処理が間に発生している筈なんだよなぁ。
タイトルから吸血鬼を外したのはシンプルなタイトルにして、かつ得体が知れなくするためかしら。
昔、MFから刊行されていた『図書館迷宮と断章の姫君』シリーズのフォロワー作品かな?(すっとぼけ)
5年前の悲劇の真相を知り、父の仇を討つため再び図書館都市へと戻ってきた主人公。そんな彼を待っていたのは見目麗しき吸血鬼の真祖で……。
まずいきなり文体が二人称で始まるという意表の突き方である。この時点で、もう普通のラノベとは一線を画しているんだが、そこから更にメタな構造が重ねられて独特の雰囲気を醸し出している。
想定も凝っていて、あちこちに本文と噛み合う細かい仕掛けが施されている。めっちゃ丁寧に作ってあるな、この本……。
最初こそとっつき難いが、中盤は結構普通のラノベっぽいラブコメもあったりして侮れない。シリアスとコメディの振れ幅が凄ぇw
何度も何度も引っ繰り返される読者の認識。何が現実で何が虚構で何が真実で何が欺瞞なのかどんどん理解らなくなってくる。というか俺は大分早い段階で置いてけぼりになって雰囲気で読んでたぞ(ぉ
そんな具合で奇才の誕生を感じさせる新作でした。続刊出来る体裁にはなっているし、劇中でもそういうメタな話をしているけど、これは1冊で終わらせておいた方が良いだろうな……。
加えて今のタイミングだと、しらびさんのスケジュール過密具合から悪影響を受けてシリーズが頓挫する可能性が否定出来ない気がする。
個人的には奇抜なもの見たさで読み進められた感じで、このテンションが2冊3冊と続くとキツいかな。刺さる人にはムチャクチャ刺さる作風だと思うけど。
良くも悪くもこのライトノベルがすごい!にランクインしそうな本かと。
雰囲気作りのテクニックはBATSUGUNにあるようで、更には普通のラノベっぽいコメディもいけるみたいなので、オーソドックスなものに持ち味を染み込ませてシリーズを作れば一発当てられるんじゃないか?
燃:A- 萌:A- 笑:A 総:A
イラストリンク
・彼女を言い負かすのはたぶん無理(スマッシュ文庫、2010/11)
・一年十組の奮闘 ~クラスメイトの清浄院さんが九組に奪われたので僕たちはクラス闘争を決意しました~(MF文庫J、2012/08)
・僕は友達が少ない ショボーン!(アライブコミックス、2012/08)
・ご覧の勇者の提供でお送りします(ファンタジア文庫、2014/03)
・神楽坂G7 崖っぷちカフェ救出作戦会議(スーパーダッシュ文庫、2014/06)
・災厄戦線のオーバーロード(ファンタジア文庫、2015/01)
・りゅうおうのおしごと!(GA文庫、2015/09)
・ラノベのプロ! 年収2500万円のアニメ化ラノベ作家(ファンタジア文庫、2016/12)
・シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する(MF文庫J、2023/06)
第13回MF文庫Jライトノベル新人賞リンク
・ひとりで生きるもん! ~粋がるぼっちと高嶺の花~(MF文庫J、2014/11)
スポンサーリンク
図書迷宮 (MF文庫J) | |
十字 静 しらび
KADOKAWA 2017-10-25 |
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません