【小説】文庫版 書楼弔堂 破暁【感想/ネタバレ】

文庫版 書楼弔堂 破曉 (集英社文庫)

著:京極 夏彦

「文字と云う呪符を読み、言葉と云う呪文を誦むことで、読んだ人の裡(なか)に、読んだ人だけの現世が、幽霊として立ち上がるのでございますよ。正に、眼前に現れましょうよ。それが━━本でございまするな」

2016年12月の新刊。約3年2ヶ月3週間半の積み。『文庫版 虚言少年』からは2年3ヶ月振り。
タイトルは「しょろうとむらいどう」と読みます。

これ、表紙はぱっと見、イラストかと思ったんだけど、遠藤大樹さんという方が制作したジオラマだそうで。コストの掛け方どうなってんだw
よく見たら味のある仕上がりやんけ。色んな角度から見てみたいよなぁ。口絵を多く取って、そういうことは出来ないのかしら。

さて、京極さんの新シリーズは明治二十年代を舞台に、本の墓場を自称する書楼弔堂を訪れる様々な歴史的偉人のターニングポイントを描く連作短編集。

人は誰しも自分にとっての最高の1冊に巡り合うために本を読んでいるという考え方、ロマンチックで素敵じゃない?
これは本に限らずの話だけどもなぁ。映画にしてもオカズ探しにしてもその他のものにしても、もっと良いものがあるんじゃないかと探すことをやめられない。そう考えると業の深い話でもあるかもなぁ。

墓場と言っているので、もの悲しいエピソードばかりになるかと思いきや、そんなことはなく明るい未来を感じさせる物語もあったりする。
まーたすぐ幽霊やお化けの話をする~。お客の素性を推測して、相応しい本を選び出す下りは京極堂シリーズにも通じるものがあるように思う。
由良や中禅寺といった明らかに別シリーズで聞いたことのある苗字が出て来ているので、他のシリーズと同じ世界観みたいですね

「本」とは何かというものを改めて読者に提示しているのが面白い。読んだ人だけの世界を立ち上がらせるという考え方が好きですね。

狂言回しとして最後まで登場する高遠さん、世捨て人みたいな生活してて、めっちゃ羨ましいぞ……。

次は2019年11月に2巻。

燃:B+ 萌:C 笑:B- 総:A+

シリーズリンク
文庫版 書楼弔堂 炎昼(2019/11)

著者リンク
文庫版 嗤う伊右衛門(角川文庫、2001/11)
文庫版 巷説百物語(角川文庫、2003/06)
文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし(角川文庫、2010/10)
厭な小説 文庫版(祥伝社文庫、2012/09)
角川文庫版 幽談(角川文庫、2013/12)
分冊文庫版 ルー=ガルー 忌避すべき狼(上)(講談社文庫、2011/09)
文庫版 虚言少年(集英社文庫、2014/09)
中公文庫版 オジいサン(中公文庫、2015/02)
文庫版 虚実妖怪百物語 序/破/急(角川文庫、2018/12)
文庫版 ヒトでなし 金剛界の章(新潮文庫、2019/02)

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Posted by お亀納豆