【小説】タイタン【感想/ネタバレ】
著:野﨑 まど
「……仕事ってそんな簡単なものではないと思うけど」
「簡単さ。余計なものさえ入り込まなければな」
「余計なものってなに」
「〝人間〟だよ」
講談社ハードカバー2020年4月の新刊。約2日の積み。メフィストで連載されたSF小説が単行本化。
店頭で実物を見るまでハードカバーだと知らなった、どうも俺です。文庫じゃないとは判っていたが、ソフトカバーだとばかり……。
「今日も働く、人類へ」というちょっと煽りっぽい帯も合わさって表紙の不気味さが著しい。ずっと眺めていたら精神に変調を来たしそう。
仕事という概念がほぼほぼ消滅し、社会を管理するAIタイタンが全てを担ってくれるようになった時代。
趣味で心理学を嗜む主人公、内匠成果(ないしょう・せいか)の元に仕事の依頼がやって来る。それはタイタンAIのカウンセリングというもので……。
野﨑さんの作品で成人女性が主人公って初めてなんじゃない?いや、『野﨑まど劇場』は別としてな。
相変わらずヘンテコなネーミングセンスなので、最初男性だと思って読んでいて戸惑ってしまった。あっ、未来過ぎて同性愛が当たり前の世界観なのかな、と。
タイタンとのやりとりを通じて、「仕事」とは何かを問い掛けていく。バッキバキのSFチックな世界観でありながら、描いているのは仕事という我々の世界に当たり前にあるものなんだよなぁ。
この辺のスタンスは「死」「善悪」を問い掛ける『バビロン』にも通じるものがある。あちらもぶっ飛んだ世界観の中で当たり前にあるものをフィーチャーしてるし。
基本的には我々が生きる社会の仕事は無駄が多く非効率で地獄のようだと語られていて、その一方で仕事に生きる意味を見出している人もいるんだとも言われている。この辺の価値観のバランスはちゃんととっているのね。
実際には、すぐに好きで仕事をやっている奴のレベルに合わせようとするアホが出て来るから困る。
AIの名前がタイタンというのはどうにもピンとこないな……と思っていたが、ちゃんと意味のあるネーミングだったと中盤で判るのは良いですね。
仕事というものを突き詰めていくストーリー構造は面白かったが、個人的にSFは門外漢なので、最原さんシリーズのような圧倒的な不気味さとどんでん返しを期待していた身としてはちょっと物足りなかったかしら。
最後に1点いいすか?本書の中にも宣伝が載っているが、『バビロン』を止めてまで、こっちを先に出す必要あったか?
燃:B- 萌:C 笑:B+ 総:A
著者リンク
・[映]アムリタ(メディアワークス文庫、2009/12)
・独創短編シリーズ 野崎まど劇場(電撃文庫、2012/11)
・なにかのご縁 ゆかりくん、白いうさぎと縁を見る(2013/04)
・know(ハヤカワ文庫JA、2013/07)
・バビロン Ⅰ -女-(講談社タイガ、2015/10)
・HELLO WORLD(集英社文庫、2019/06)
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