文春文庫

定本 百鬼夜行 陰 (文春文庫)
著:京極 夏彦

私はいったい何を厭うているのだ。

文春文庫2015年1月の新刊。約8ヶ月3週間半の積み。文春文庫に京極さんが登場。本当は先に読むべきものが何冊かあるんだけど、早く『薔薇十字叢書』シリーズに手をつけたいので優先消化することにました。

元々は講談社ノベルスで刊行されたものが講談社文庫へ文庫落ち、その後、『定本』の名を冠し文芸春秋から刊行、それがまた文庫落ちという流れ。

講談社文庫版を持ってるんだけど、表紙が荒井さんの張り子となればスルーするわけにもいかず。それに初の文庫化となる『陽』とセットになっていることを考えると買わないのは据わりが悪いしな。
それにしても表紙の小袖の手の気味の悪さといったら。

定本っていうけど、何か講談社版と変わっているんだろうか。巻末の妖怪イラストが新しく追加されてるっぽい。ってか京極さんが描いてるのかよ、多才過ぎんだろw

内容的には主に『百鬼夜行』シリーズの脇役達にスポットを当てたサイドストーリー集。登場人物達はいずれも心に闇を抱えているが、京極堂が登場しないので、その闇がはっきりと妖怪として現れることなく、最後は破滅を迎えてしまう。

つまり大体、後味が悪いオチが待っている。徐々に病んでいく主人公達が不気味な世界観を醸し出している。エピソードによっては一旦持ち上げてから叩き落すものもあるので質が悪い。

本編ではロクな出番も無いまま死亡した人物が主人公に抜擢されていたりするので、こいつ誰だ……?と思うこともしばしば。
色々調べながら、この感想を書いてるんだけど、しれっと『ルー=ガルー』と繋がっているって、ウィキペディアに書かれていて吹いた。

京極さんの作品の世界観が全部繋がってるらしいとは聞いていたけど、そんなところで繋がってるのかよ……。

いやしかし、これを読むと本編が読みたくなってくるから困る。
次は同時発売の『文庫版 定本 百鬼夜行━陽』。

燃:B- 萌:C+ 笑:C+ 総:A+

シリーズリンク
文庫版 定本 百鬼夜行━陽(2015/01)

アニメ,角川文庫

「人間は頭の中に蝶を飼ってるんだ」

小説投稿サイトE★エブリスタに投稿された後、角川文庫より刊行されているキャラクター文芸がアニメ化。

以前から年上のお姉さんヒロインオーラが漂っていたので気にはなっていたんだけど、ラノベレーベルでないところから出ている本まで、そんな感度で買うと収集がつかなくなるので見送ってたんだよな。
そんなわけで取り敢えずどんなものか視てみようと。
製作会社はトロイカという新しいところか。

OPカットで本編開始。
舞台は北海道。高校生である主人公、館脇正太郎は骨を愛する変わり者の美女、九条櫻子さんに振り回される形で様々な事件に関わっていく……というお話。

淡々とした展開になりがちな謎解きシーンを幻想的な光景を挟むことで、上手い具合に映像として惹き込まれるものに仕上げてる感じ。このクオリティが今後も維持出来るのか分からんけど。

櫻子さんは確かに年上のお姉さんヒロインなんだけど、俺のセンサーが反応するタイプのキャラではなかったですね。喋り方が男口調なところが主に反応しない理由だと思われる。
拾った人骨を警察に渡したくないと駄々をこねる様子は可愛かったけどなぁ。

ED代わりにOPを流して終了。黒背景だったのでOP映像は次回へお預けの様子。
そんな感じで、また新たなキャラクター文芸のアニメがスタートです。個人的には視聴継続するほどではないかなぁ。
いや、時間があれば視続けても良いんだけども、いかんせん秋アニメの本数が多過ぎるんだよな……。

燃:C 萌:A 笑:B+ 総:A

宝島社文庫

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)
著:谷 春慶 イラスト:カズアキ

「……そもそも文字はなにかを誰かに伝えるための道具だ。可児盛徳も『文字は伝わらなければ意味がない』と言っていた。思いや願いを捧げる相手がいなければ、ただの記号でしかないんだよ」

宝島社文庫2015年10月の新刊。約3日の積み。献本を頂きました。有り難うございます。このライトノベルがすごい!文庫ですっかり見なくなった谷さんが唐突に宝島社文庫にライトミステリで推参。

一昔前はバトルものとかを書いていた作家さんが萌え萌えなラブコメやら美少女異能バトルやらを書かされていて、魔改造だ……と思ったけど、最近はキャラクター文芸のライトミステリを書かすのが魔改造なのか……w

主人公の女子大生、美咲はある日、祖父が遺した祖母宛ではない恋文を見付けてしまう。祖父の真実を求めて、美咲は同じ大学に通う変人、東雲清一郎に恋文の筆跡鑑定を頼むが……。

そんな具合で筆跡鑑定のスキルを持つ変人イケメン東雲が一般人の美咲を振り回しながら謎を解決していく連作短編集です。
最近流行りのライトミステリなんだけど、俺、こういう一般人の主人公と変人の探偵役が謎を解いていく展開が好きなんだと気付いたわ。
ってか前作でゼウスのチ〇コとか書いていたのと同じ人が書いたとは思えんなw

自分の中に確固たる信念を持ち、その生き方を貫く東雲が格好良い。牙を剥いてくる者には容赦ないのがまた良い。
そのくせ、方向音痴だったり照れ隠しが下手だったりと、これは女子受けしそうですわ。俺もこういうキャラ好きですしね。

美咲と東雲の何だかんだで良いコンビっぷりがもっと見たいので、是非続きを出していただきたい。回収されず仕舞いの要素もチラホラあることだし。

燃:B+ 萌:A 笑:B+ 総:A+

シリーズリンク
筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 鎌倉の猫は手紙を運ぶ(2016/06)

著者リンク
モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)(このライトノベルがすごい!文庫、2011/09)
神☆降臨! ロンギヌスの槍は銃刀法にひっかかりますか?(このライトノベルがすごい!文庫、2013/12

宝島社文庫,雑記

献本を頂きました。有り難うございます。

・筆跡鑑定人・東雲清一郎は書を書かない。

の計1冊。

角川文庫

県庁おもてなし課 (角川文庫)
著:有川 浩 イラスト:ウチダ ヒロコ

あなたが納得するかどうか知らない。ただ俺たちは、誰がいてもいなくても自分たちの全力で踊るだけだ。
それがどんなに無様でも、滑稽でも。でたらめに、がむしゃらに。
だからあんたはそこで見ていろ。踊れと突きつけたあんたは見届けろ。

角川文庫2013年4月の新刊。約2年5ヶ月1週間の積み。『文庫版 ラブコメ今昔』からは10ヶ月振り。

各地方紙で連載されていた新聞小説。舞台は高知県県庁にあるおもてなし課、観光立県を目指す職員達とそれを取り巻く人々の奮闘を描く。
元々、有川さんの体験をベースに組み立てられているらしいので何割かはノンフィクション的要素を含んでいる。

ザ・お役所仕事で遅々として進まないプロジェクトが少しずつ改善されて前を向いていく過程が面白い。
その中で進行する2つの恋の物語。最初に主人公とヒロインを出して、こいつ等でLOVE寄せするよ?いいね?と思わせておいて、もう1組カップル出してくるとかズルいw

やっぱりラブコメがガチのメインじゃなくて、別にストーリーの軸がはっきりとあった上でLOVE寄せしていた方が面白いな、有川さんの場合。

惜しいのは最後の盛り上がりが弱いかなぁというところ。新聞連載という形式上、仕方ないことなのかなぁ。
もうちょっと最後に大きなインパクトがあると良かったんだけど。

結局アレだよな。クソな上層部って新しいことをしろだの何だの言うけど、必要なリソースやリスクはとことんケチるから下が何にも出来なくなるんだよな。
あー早く俺も出世して非効率化の推進してたらお金貰える立場になりたーい。

次は2015年9月に『角川文庫版 レインツリーの国』。

燃:A 萌:A 笑:B+ 総:A

著者リンク
レインツリーの国(ハードカバー、2006/09)
文庫版 空の中(角川文庫、2008/06)
三匹のおっさん(ハードカバー、2009/03)
シアター!(メディアワークス文庫、2009/12)
文庫版 阪急電車(幻冬舎文庫、2010/08)
文庫版 ラブコメ今昔(角川文庫、2012/06)
文庫版 フリーター、家を買う。(幻冬舎文庫、2012/08)
文庫版 植物図鑑(幻冬舎文庫、2013/01)
新潮文庫版 キケン(新潮文庫、2013/06)
新潮文庫版 ヒア・カムズ・ザ・サン(新潮文庫、2013/09)
文庫版 ストーリー・セラー(幻冬舎文庫、2015/12)
文庫版 空飛ぶ広報室(幻冬舎文庫、2016/04)
文庫版 旅猫リポート(講談社文庫、2017/02)
文庫版 キャロリング(幻冬舎文庫、2017/12)
文庫版 明日の子供たち(幻冬舎文庫、2018/04)
文庫版 アンマーとぼくら(講談社文庫、2020/08)
文庫版 イマジン?(幻冬舎文庫、2022/08)
文庫版 みとりねこ(講談社文庫、2024/04)

宝島社文庫

絵本作家・百灯瀬七姫のおとぎ事件ノート (宝島社文庫)
著:喜多 南 イラスト:やじるし

「たしかに、星の王子様は童話の王子様イメージとはまた違う気がする」
「ぶっちゃけエイリアンですよね」

サン=テグジュペリに呪い殺されるぞw
宝島社文庫2015年9月の新刊。約3日の積み。献本を頂きました。有り難うございます。著者の喜多さんは第2回このライトノベルがすごい!大賞でデビューした人なので、多分その繋がりで献本が貰えたんだと思う。開封したら、いつもと違う装丁の本が出て来たから「!?」ってなったわ。
タイトルの「百灯瀬七姫」は「ももとせ・ななひめ」と読みます。

元々宝島社文庫は一般っぽい小説からラノベっぽいものまで色々出してるレーベルなのね。最近話題になった『響け!ユーフォニアム』の原作もここから出ていた筈。
イラストは表紙だけとなっています。

主人公、園川智三(そのかわ・ともぞう)はクラス委員長である責任感から、とある事件を起こして不登校となったクラスメイト、百灯瀬七姫を訪ねる。
メルヘンオタクの七姫と交流する内に、智三は周囲で起こる事件の謎に迫っていくことに……。
いわゆる最近流行りのキャラクター文芸、ライトミステリというやつか。

事件を童話になぞらえて答えを導き出す連作短編集のスタイルで、童話を扱っているという点で電撃文庫『断章のグリム』を思い出しますね。
おとぎ話の薀蓄はもっと沢山あっても良かった。まぁ『断章のグリム』で耐性が出来てるから、そう感じるのかもしれんけど。

『おとぎ事件ノート』とかスーパーメルヘンなタイトルが付いてるけど、劇中で起こる事件は日常ミステリとは言い難い、なかなかにハードな内容となっている。流石に死人が出たりするわけではないけど、事件が解決しても当事者達が幸せハピネスになるわけではない感じのアレ。
個人的にはハートフル路線の方が好きなのだが。

ところで一見デキる美人なんだけど、実はへっぽこなお姉さんって良いよね。うぉぉぉおおおおぉぉおおお、へなちょこなお姉さん可愛いな!と思っていたら、最後の最後で引っ繰り返された俺の純粋な気持ちを返してほしい。
というわけで次はホントにあんな感じのお姉さんオナシャス

燃:C 萌:A 笑:A- 総:A

著者リンク
きみがすべてを忘れる前に(2017/03)

 

角川文庫

文庫版 豆腐小僧双六道中おやすみ (角川文庫)
著:京極 夏彦

「オケツに入らずんば疣痔を得ずです」

2013年7月の新刊。約2年1ヶ月の積み。2年9ヶ月の積み。『文庫版 西巷説百物語』からは4ヶ月振り。

さて、今回は甲州の裏街道を行く珍妙な二人組を意味も無く追いかける内に騒動に巻き込まれる豆腐小僧達を描く長編構成となっている。

うーん、この内容的に一気に長ページ読みたい話じゃないんだよなぁ。多分、30~50ページずつくらい読むなら苦も無く読めるんだろうけども。
ちまちま薀蓄を読みたい感じ。

それに散々埋蔵金を巡って騒動が起きた挙げ句、肝心の埋蔵金の行方は定まらないまま終わるという。
どうにもまだ続くっぽいんだけど……?うーん、仮に続きが出たとして買うべきかどうか……。

ところで、いつの間にか『豆腐小僧その他』の共通フォーマット表紙版が出てて、何……だと……?ってなってる。

次は2013年12月に『角川文庫版 幽談』『角川文庫版 冥談』、2014年8月に『文庫版 数えずの井戸』。
ちなみに、このスケジュール小説以外は書いてません。

燃:C 萌:C 笑:B+ 総:B+

シリーズリンク
文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし(2010/10)

著者リンク
・文庫版 西巷説百物語(2013/03)
角川文庫版 幽談(2013/12)

μNOVEL,宝島社文庫

おやおや、今月も献本が届きましたよとか思いながら、開封したらこのライトノベルがすごい!文庫じゃなくて宝島社文庫が出て来て、何……だと……?ってなってる俺です。有り難うございます。

・絵本作家・百灯瀬七姫のおとぎ事件ノート

の計1冊。

毎日新聞出版株式会社が大人向けライトノベルの新レーベルμNOVEL(ミューノベル)を創刊決定。
いわゆるボーダーレーベルだと思うんだけど、ラインナップにファンタジア文庫で停止している『ザ・サード【完全版】』が入っていて吹いた。

イラストに士郎正宗さんを起用とか、やる気の漲り方が凄いw
値段とページ数を見るに文庫数冊をまとめるのか書き下ろしが沢山あるのか。でも、どうせ完全新作を1冊だけ出して止まったりするんでしょう?

講談社文庫,雑記

最近、普段行かない場所で本屋を見かけたときは京極夏彦さんの帯付き文庫の既刊が置いてないかなーと探してるんだけど、今回1冊見付けたので購入。

・分冊文庫版 ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔(上)

の計1冊。

幻冬舎文庫

植物図鑑 (幻冬舎文庫)
著:有川 浩 イラスト:カスヤ ナガト

ノイチゴのサンドイッチは残しておいて最後に食べた。
体がすっきりするような甘酸っぱさ。まるで恋してるような味って言ったら、けっこうあたし恥ずかしい?

胸のキュンキュン止まらないよ!

幻冬舎文庫2013年1月の新刊。約2年3ヶ月3週間の積み。『文庫版 フリーター、家を買う。』からは5ヶ月振りか。
携帯小説サイト、小説屋sari-sariにて連載されていたものが文庫落ち。
口絵にはタイトル通り、劇中に登場する野草の写真が収録されている。

一人暮らしのOL、河野さやかはある日、行き倒れている青年を拾う。イツキと名乗った青年はマニアックな植物の知識を豊富に持ち、見事さやかの家のハウスキーパーを務めてしまう。かくして2人の奇妙な共同生活が始まるが……というお話。

パッケージングの時点で恋愛がメインってことは見えていたから、物凄い身構えて読んだら、意外と大人しかったという印象。
もうちょっと露骨にコメディに振っても良かったと思うのだが。

ラブストーリーパートと植物の解説パートが半々くらいってのも大人しいと感じる理由かもしれん。
結構、薀蓄が長いんだよな。そこがちょっとくどく感じてしまったな。
ただ、採取した野草を使った料理は超旨そう。天ぷらと混ぜ込みご飯が食べたくなりますね。
巻末には劇中料理のレシピを掲載。やたら本としての作りが凝ってるなw

燃:C 萌:A 笑:B+ 総:A

コミカライズリンク
植物図鑑 1巻(2014/07)

著者リンク
レインツリーの国(ハードカバー、2006/09)
文庫版 空の中(角川文庫、2008/06)
三匹のおっさん(ハードカバー、2009/03)
シアター!(メディアワークス文庫、2009/12)
文庫版 阪急電車(幻冬舎文庫、2010/08)
文庫版 フリーター、家を買う。(2012/08)
文庫版 県庁おもてなし課(角川文庫、2013/04)
新潮文庫版 キケン(新潮文庫、2013/06)
新潮文庫版 ヒア・カムズ・ザ・サン(新潮文庫、2013/09)
文庫版 ストーリー・セラー(幻冬舎文庫、2015/12)
文庫版 空飛ぶ広報室(幻冬舎文庫、2016/04)
文庫版 旅猫リポート(講談社文庫、2017/02)
文庫版 キャロリング(幻冬舎文庫、2017/12)
文庫版 明日の子供たち(幻冬舎文庫、2018/04)
文庫版 アンマーとぼくら(講談社文庫、2020/08)
文庫版 イマジン?(幻冬舎文庫、2022/08)
文庫版 みとりねこ(講談社文庫、2024/04)

イラストリンク
チョコレート・コンフュージョン(メディアワークス文庫、2016/02)
いつものBarで、失恋の謎解きを(ソフトカバー、2021/05)