【小説】文庫版 イマジン?【感想/ネタバレ】

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著:有川 ひろ

「下支えだよ。キャストやスタッフが全力出せるように下支えすンのが制作だ」

幻冬舎文庫2022年8月の新刊。約1週間半の積み。『文庫版 明日の子供たち』からは4年4ヶ月振り。
今回は有川さんが業界でこれまで経験してきた事をフルに用いたと思われる映像制作現場の悲喜こもごもが描かれる連作中編集。

中堅制作会社である殿浦イマジンに入社した主人公、良井良助(いい・りょうすけ)の視点で主に語られていく。
表紙は新人がまず出来るのは走ること、みたいなイメージなのね。

大人気女優の喜屋武七海さんがいる現場に2回も入れて、これって運命では?偏屈な監督から七海さんを守ってフォーリンラブや!やったねパパ!明日もホームランだ!と思ったのに、先輩に持っていかれてしまうという。おのれディケイド!思わせ振りな態度見せやがって……!

殿浦社長は場を収めるためなら泥を被ることも辞さない。うーん、俺だったらその場で噛みついてしまう自信がある……。黙ってその場を流すって何気に難しいよなぁ……。
そんな殿浦さん、社員を死なせない会社を作るというのがコンセプトらしいんだけど、繁忙期は数日間徹夜が当たり前という職場で果たして、死人が出ないままでいられるのか……という気がする。
仕事中にぶっ倒れた奴がいても寝不足と分かれば、その辺に転がしておくってヤバない?

映像制作の現場はなぁ、なまじ夢や憧れを抱いて入ってきている人が多いだけにオーバーワークになったり、ハラスメントの温床が出来やすかったりするんやろなぁ。

制作現場のあれこれは実に興味深いですねぇ。プロデューサーの種類に関する話も面白かったな。製作側とテレビ局側のプロデューサーがいるっていう話は、普段ニチアサでも気になっている部分なので理解が深まって良かった。

雨天時の撮影を晴れのシーンに見せかけるためライティングで調整が出来るというのも興味深かった。あれって小雨だから映り難いのかと思ってたけど、特別に処理を掛けてるということだったのか。

劇中作は明らかに有川さんの過去の著作をベースにしていると判るタイトルがいくつか登場。これ、どこまでマジの事が書いてあるのか……とドキドキしちゃうね。
全体的にものづくりに対する熱量が溢れかえっていて面白かったな。強いて言うならLOVE寄せはもっと濃くしてほしかったか。

燃:A+ 萌:A 笑:A- 総:A+

著者リンク
レインツリーの国(ハードカバー、2006/09)
文庫版 空の中(角川文庫、2008/06)
シアター!(メディアワークス文庫、2009/12)
三匹のおっさん(ハードカバー、2009/03)
文庫版 阪急電車(幻冬舎文庫、2010/08)
文庫版 フリーター、家を買う。(幻冬舎文庫、2012/08)
文庫版 植物図鑑(幻冬舎文庫、2013/01)
文庫版 県庁おもてなし課(角川文庫、2013/04)
新潮文庫版 キケン(新潮文庫、2013/06)
新潮文庫版 ヒア・カムズ・ザ・サン(新潮文庫、2013/09)
文庫版 ストーリー・セラー(幻冬舎文庫、2015/12)
文庫版 空飛ぶ広報室(幻冬舎文庫、2016/04)
文庫版 旅猫リポート(講談社文庫、2017/02)
文庫版 明日の子供たち(幻冬舎文庫、2018/04)
文庫版 アンマーとぼくら(講談社文庫、2020/08)

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イマジン? (幻冬舎文庫 あ 34-8)

幻冬舎文庫

Posted by お亀納豆