シアター!
著:有川 浩 イラスト:大矢 正和
「リスクなしで金が借りられると思うな!」
「降って湧いた借金三百万、お前ら全員で頭割りにしたらたかだか三十万だ!いい年こいた大人が雁首揃えてそれっぽっちの金も用立てられなかったことを恥じろ!無利子で二年も猶予をやるのに返済できないならお前らに才能なんかない!二年間死にものぐるいでやれ!自分の無力を思い知って死ね!借金できりきり舞いして夢も希望も枯れ果ててしまえ!」
「畜生、この守銭奴!」
「守銭奴けっこう!金は正義だ!」
約2ヶ月1週間半の積み。メディアワークス文庫創刊ラインナップの内の1冊。一般文芸でも人気作家になった有川さんが古巣で書いてくれるのは嬉しい限り。一応、電撃から派生したレーベルだから古巣扱いでも良いよね?
そもそもMW文庫創刊のきっかけに間違い無く噛んでるだろうし。
創刊だし、記念に1冊くらい買っとくか程度の気持ちで買った本作ですが、ストレートに面白かった。
実力はそれなりにあるのに、杜撰な経営体制の所為で今一つ振るわない小劇団シアターフラッグに主催である巧の兄、司と現役声優の千歳が加わったことで劇的な変貌を遂げる様が痛快。
時には演劇の豆知識を交えて話が展開するのも興味深い。演劇経験者にも読んでほしいな。
雰囲気は『図書館戦争』の読者をかなり意識していると思われ。キャラ同士の掛け合いのテンションなんかはほぼそのまま。
ただ、LOVEが殆ど無いんだよなぁ。最後の最後で司と千歳でがっつりLOVE寄せしてきて、読者皆殺しになると思ったんだがな……。
MW文庫の中には既にシリーズ化が決定しているものもあるが、これはシリーズ化しないのかな。後書きからは、そういった気配を一切感じないが。
最後にLOVEがあれば、このまま終わっても良かったかなという気はするんだけどなぁ。そういうわけなんで、シリーズ化希望です。
後書きによると、本作が生まれたのは『図書館戦争』のアニメで柴崎を演じたみゆきちが所属する劇団の公演を有川さんが観に行ったことがきっかけだったそうで。何が良い結果に繋がるか判らんな。
ちなみに、その劇団の主宰さんによる解説みたいなものが付いてます。
ところで、紙質が電撃文庫と比べて薄い。これは一般レーベルに合わせた結果なんだろうか。
加えて、電撃フォーマットが1ページ17行なのに対して、MW文庫フォーマットは1ページ16行。何で一般向けの方が文字大きいねん……。
開いた瞬間、「文字デカっ!?」って思うくらい違いが判るの。
燃:B+ 萌:C+ 笑:B+ 総:A
シリーズリンク
・シアター! <2>(2011/01)
著者リンク
・レインツリーの国 World of delight(新潮社ハードカバー、2006/09)
・文庫版 空の中(角川文庫、2008/06)
・三匹のおっさん(文藝春秋ハードカバー、2009/03)
・文庫版 阪急電車(幻冬舎文庫、2010/08)
・文庫版 フリーター、家を買う。(幻冬舎文庫、2012/08)
・文庫版 植物図鑑(幻冬舎文庫、2013/01)
・文庫版 県庁おもてなし課(角川文庫、2013/04)
・新潮文庫版 キケン(新潮文庫、2013/06)
・新潮文庫版 ヒア・カムズ・ザ・サン(新潮文庫、2013/09)
・文庫版 ストーリー・セラー(幻冬舎文庫、2015/12)
・文庫版 空飛ぶ広報室(幻冬舎文庫、2016/04)
・文庫版 旅猫リポート(講談社文庫、2017/02)
・文庫版 キャロリング(幻冬舎文庫、2017/12)
・文庫版 明日の子供たち(幻冬舎文庫、2018/04)
・文庫版 アンマーとぼくら(講談社文庫、2020/08)
・文庫版 イマジン?(幻冬舎文庫、2022/08)
・文庫版 みとりねこ(講談社文庫、2024/04)
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