【小説】新潮文庫版 ヒア・カムズ・ザ・サン【感想/ネタバレ】
著:有川 浩
編集者にとって一番大切な仕事は物語に寄り添うことだ。
物語に寄り添い、登場人物に寄り添い、物語が望む結末を探す。
編集者は作家の示す世界において、そのための探訪者であらねばならないのだ。
新潮文庫2013年9月の新刊。約6年7ヶ月1週間の積み。『新潮文庫版 キケン』からは3ヶ月振り。
演劇集団キャラメルボックスとのコラボ作品……らしい。僅か7行の粗筋から小説と舞台、2つの物語が生み出され、こちらはその小説の方。更に有川さんが舞台の方を見て得た着想で、もう1回小説化したパラレル版も収録、というクッソややこしい構成。
モノにまつわる人の記憶が見える能力を持つ主人公、真也。彼はその能力で同僚カオルの親子関係の問題に関わっていくことに……。
いわゆるサイコメトリー的なアレだと思うんだが、真也は主人公として活躍するというより狂言回し的ポジションのように感じる。
スポットが当てられているのはカオルとその父との関係性だったしね。
本編もパラレル版の方も、娘に真っ直ぐに愛を伝えられない父親の姿が描かれており、うーん、これはしんどい。
クリエイターの闇みたいなものを感じるんだが、これは有川さんの実体験を含んでいるんだろうか……。
有川さんの作品って多少の苦みを残しつつも最後はハッピーエンドという作品が多い印象だけど、本作は苦みの中にひとかけらの希望が、といった結末でしたね。
次は2014年6月に『三匹のおっさん』、2015年1月に『三匹のおっさん、ふたたび』
燃:C 萌:C 笑:B+ 総:A
著者リンク
・レインツリーの国(ハードカバー、2006/09)
・文庫版 空の中(角川文庫、2008/06)
・三匹のおっさん(ハードカバー、2009/03)
・シアター!(メディアワークス文庫、2009/12)
・文庫版 阪急電車(幻冬舎文庫、2010/08)
・文庫版 ラブコメ今昔(角川文庫、2012/06)
・文庫版 フリーター、家を買う。(幻冬舎文庫、2012/08)
・文庫版 植物図鑑(幻冬舎文庫、2013/01)
・文庫版 県庁おもてなし課(角川文庫、2013/04)
・新潮文庫版 キケン(新潮文庫、2013/06)
・文庫版 ストーリー・セラー(幻冬舎文庫、2015/12)
・文庫版 空飛ぶ広報室(幻冬舎文庫、2016/04)
・文庫版 旅猫リポート(講談社文庫、2017/02)
・文庫版 キャロリング(幻冬舎文庫、2017/12)
・文庫版 明日の子供たち(幻冬舎文庫、2018/04)
・文庫版 アンマーとぼくら(講談社文庫、2020/08)
・文庫版 イマジン?(幻冬舎文庫、2022/08)
・文庫版 みとりねこ(講談社文庫、2024/04)
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