著:田口 一 イラスト:をん
「宇宙人と超能力者と未来人なのね!売れそうな設定だわ!」
約二ヶ月二週間の積み。『黒姫のユズハ』が三巻で打ち切られた田口さんが三ヶ月振りに放つ第三シリーズは最近激増しているラノベ作家もの。三ヶ月というと普通にシリーズものが出るスパンなわけだが、この短期間で新シリーズを出せるとは、かなりの速筆なんだろうか。
イラストは『ユズハ』から引き続き、をんさんです。
タイトルの「三流木」は「みつるぎ」と読む。
一か月前に一般文芸の小説家としてデビューした主人公、孝一だったが、本は全くと言っていいほど売れなかった。そんな彼は三流木出版の社長の娘、萌花さんと出会ったことから、全く未知の領域ライトノベルを書くことになる。
「萌え」がさっぱり理解らない孝一は担当になった萌花さんの身体を張ったエロい調教特訓で少しずつ萌えに目覚めていく……という話。
一般文芸からラノベへ転身というと、ガガガ文庫の『ラ・のべつまくなし』を思い出すな。ただ、あちらはプロローグで主人公がラノベを書くことを提案されて、第一章で早くも超売れっ子作家になっているが、こちらは本を一冊出す過程をしっかり描いている。
まず口絵を見ると、二ページずつ使って三人のヒロインが紹介されている。主人公一人に対してヒロインは三人。これぞMFラブコメテンプレート。ここ、テストに出るから憶えておくように(ぉ
とは言っても、同レーベルの『IS』等とは異なり、今回はあくまでも孝一と萌花さんの関係にスポットを当て、他の二人のヒロインは顔見せ程度となっており、安定した構成を見せる。
これ書いてる途中に気付いたんだが、モノクロ扉の裏に「担当・三流木萌花」って書いてあった。細かいとこ凝ってるな。
章扉に架空のラノベ紹介が載っている。これって結構な手間がかかってるんじゃ……。
萌えを理解するために売れているラブコメ作品を読む孝一。彼は表紙をめくったら全裸の女の子のイラストが出て来て大層慌てて、「エッチな本じゃないかっ!」と叫ぶが、田口さんのデビュー作、そんなんだったじゃねぇかwwww
つーか、十ページに一度エッチなシーンが出て来るって、どんだけだよw
それで物語としての体裁を保てるのか。保ってたら、ある意味凄いが。
成功する萌え作家は計画タイプと変態タイプに分かれるとか、一見、阿呆なこと言っているようにしか見えないが、実際結構的を射てるんじゃないのかなぁ。
この辺はふざけ半分なんだが、実際に作家が原稿を上げてから書店に並ぶまでの行程がしっかり描かれているのが面白い。勿論、フィクションを織り交ぜてはいるんだろうが、それでも大まかな流れはちゃんと語られてるっぽい。
業界ネタとパロディネタ塗れで肝心のストーリーはgdgdかと思いきや、ちゃんとストーリーとしてもラブコメとしても完成しているのが凄い。
いや、これは面白かった。僕が作家ネタに弱いというのもあるだろうが、この勢いが続けば三巻打ち切りは回避出来るだろう。
萌花さん可愛いよ萌花さん。
次は十二月。
燃:B+ 萌:A+ 笑:A- 総:A+
イラストリンク
・恋する鬼門のプロトコル(電撃文庫、2010/06)
・落第騎士の英雄譚(GA文庫、2013/07)
魔女ルミカの赤い糸 (MF文庫J)